軍事扶助法

第一条

傷病兵、其ノ家族若ハ遺族又ハ下士官兵ノ家族若ハ遺族ハ本法ニ依リ之ヲ扶助ス

第四条

本法ニ於テ下士官兵又ハ傷病兵ノ遺族ト称スルハ左ノ各号ノ一ニ該当スル者ヲ謂フ

1. 戦死シタル陸海軍下士官兵又ハ第二条各号ノ傷痍若ハ疾病ノ為死歿シタル陸海軍下士官兵若ハ傷病兵ノ配偶者又ハ子ニシテ現ニ下士官兵又ハ傷病兵カ死亡ノ時属シタル家ニ在ル者但シ養子ハ家督相続人ニ限ル
2. 前号ニ掲クル者ヲ除クノ外戦死シタル陸海軍下士官兵又ハ第二条各号ノ傷痍若ハ疾病ノ為死歿シタル陸海軍下士官兵若ハ傷病兵ニ依リ扶養ヲ受クヘキ者ニシテ下士官兵ノ死亡ノ時又ハ傷病兵ノ傷病兵タルニ至リタル時ヨリ引続キ之ト同一ノ家ニ在ル者
3. 前二号ニ掲グル者ヲ除クノ外戦死シタル陸海軍下士官兵又ハ第二条各号ノ傷痍若ハ疾病ノ為死歿シタル陸海軍下士官兵若ハ傷病兵ニ依リ扶養ヲ受クベキ者ニシテ下士官兵ノ入営若ハ応召シタル時又ハ傷病兵ノ傷病兵タルニ至リタル時之ト同一ノ世帯ニ在リ且引続キ其ノ世帯ニ在ルモノ

第五条

扶助ハ下士官兵ノ入営応召傷病若ハ死亡又ハ傷病兵ノ死亡ノ為生活スルコト困難ナル者ニ対シテノミ之ヲ為ス
扶助ハ生活ニ必要ナル限度ヲ超ユルコトヲ得ス

第六条

扶助ノ種類ハ生活扶助、医療、助産及生業扶助トス

第七条

扶助ノ程度及方法ニ関シ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム

第七条ノ二

扶助ヲ受クル者死亡シタル場合ニ於テハ勅令ノ定ムル所ニ依リ埋葬ヲ行ヒ又ハ埋葬ヲ行フ者ニ対シ埋葬費ヲ給スルコトヲ得

第八条

傷病兵六年ノ懲役又ハ禁錮以上ノ刑ニ処セラレタル者ナル場合ニ於テハ其ノ者並其ノ家族及遺族ニ対シ扶助ヲ為サス

第九条

下士官兵又ハ傷病兵六年未満ノ懲役又ハ禁錮ニ処セラレタル者ナル場合ニ於テハ其ノ刑ノ執行ヲ終リ又ハ執行ヲ受クルコトナキニ至ル迄ノ間其ノ傷病兵其ノ下士官兵又ハ傷病兵ノ家族ニ対シ扶助ヲ為サス

第十条

下士官兵又ハ傷病兵ノ家族又ハ遺族六年ノ懲役又ハ禁錮以上ノ刑ニ処セラレタル者ナル場合ニ於テハ其ノ者ニ対シ扶助ヲ為サス六年未満ノ懲役又ハ禁錮ニ処セラレタル者ナル場合ニ於テハ其ノ刑ノ執行ヲ終リ又ハ執行ヲ受クルコトナキニ至ル迄ノ間亦同ジ

第十一条

下士官兵ニシテ逃亡シ又ハ陸軍教化隊ニ収容セラレタル者ニ付テハ其ノ逃亡又ハ収容ノ間其ノ家族ニ対シ扶助ヲ為サス

第十二条

下士官兵又ハ傷病兵ニシテ怠惰又ハ素行不良ナル者ニ付テハ其ノ傷病兵並其ノ下士官兵又ハ傷病兵ノ家族及遺族ニ対シ情状ニ因リ扶助ヲ為サス又ハ扶助ノ程度ヲ減少スルコトヲ得
下士官兵又ハ傷病兵ノ家族又ハ遺族ニシテ怠惰又ハ素行不良ナル者ニ対シ亦前項ニ同シ

第十三条

傷病兵ニシテ日本ノ国籍ヲ失ヒタル者ニ対シテハ扶助ヲ為サス

第十三条ノ二

下士官兵ノ家族ニ対スル扶助ハ必要アル場合ニ於テハ下士官兵ノ退営又ハ召集解除後仍三月以内之ヲ継続スルコトヲ得

第十四条

下士官兵又ハ傷病兵ノ家族ニ対スル扶助ハ下士官兵又ハ傷病兵死亡後仍三月内之継続スルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ扶助ヲ受クル者ニ対シテハ其ノ間下士官兵又ハ傷病兵ノ遺族トシテノ扶助ハ之ヲ為サス

第十五条

下士官兵ノ家族ニ対スル扶助ハ下士官兵ノ傷病兵トナリタル後仍三月内之ヲ継続スルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ扶助ヲ受クル者ニ対シテハ其ノ間傷病兵ノ家族トシテノ扶助ハ之ヲ為サス

第十六条

本法ニ依ル扶助ハ他ノ法令ノ適用ニ付テハ貧困ノ為ニスル公費ノ救助ニ非サルモノト看做ス

第十七条

本法ニ依リ給与ヲ受ケタル扶助金品ヲ標準トシテ租税其ノ他ノ公課ヲ課セス

第十八条

本法ニ依ル扶助金品ハ既ニ給与ヲ受ケタルト否トニ拘ラス之ヲ差押フルコトヲ得ス

第十九条

旧刑法ノ重罪ノ刑ニ処セラレタル者ハ本法ノ適用ニ付テハ六年ノ懲役又ハ禁錮以上ノ刑ニ処セラレタル者ト看做ス

（大正６年７月２０日法律第一号）