海軍志願兵令

第一章 総則

第一条

海軍志願兵トハ左ニ掲グル海軍兵ヲ謂フ

1. 本令ニ依ル海軍兵ニ採用セラレ海軍兵籍ニ編入セラレタル者
2. 兵役法又ハ兵役法施行令第七条第一項ノ規定ニ依リ徴集又ハ採用セラレタル海軍兵ニシテ本令ニ依リ再現役ニ入リタル者

第二条

志願兵ノ服スベキ兵役ハ現役及予備役トス

第三条

第一条第一号ニ規定スル現役志願兵ノ兵籍ハ之ヲ志願兵徴募地ノ海軍志願兵徴募区ヲ管轄スル鎮守府ニ置キ第一条第二号ニ規定スル現役志願兵ノ兵籍ハ之ヲ再現役ヲ許可シタル鎮守府ニ置ク但シ海軍大臣ハ必要ニ応ジ現役志願兵（帰休中ノ志願兵ヲ除ク）ノ兵籍ノ所在ヲ変更スルコトヲ得
帰休中ノ志願兵又ハ現役ヲ離レタル志願兵ノ兵籍ハ之ヲ其ノ本籍地ノ志願兵徴募区ヲ管轄スル鎮守府ニ置ク

第四条

志願兵ノ採否ノ決定、再現役ノ許否ノ決定、転役及免役ノ処分ハ在籍鎮守府司令長官之ヲ行フ

第五条

六年ノ懲役又ハ禁錮以上ノ刑ニ処セラレタル者ハ服役スルコトヲ得ズ

第六条

本令中都道府県ニ関スル規定ハ樺太ニ在リテハ樺太庁ニ、市又ハ市長ニ関スル規定ハ東京都ノ区ノ存スル区域、京都市、大阪市、名古屋市、横浜市又ハ神戸市ニ在リテハ区又ハ区長ニ、町村、町村長又ハ町村吏員ニ関スル規定ハ町村、町村長又ハ町村吏員ニ準ズベキモノニ之ヲ適用ス

第二章 服役

第十一条

現役志願兵ハ第七条ニ規定スル現役期間満ツルモ引続キ数次現役ヲ志願スルコトヲ得
兵役法又ハ兵役法施行令第七条第一項ノ規定ニ依リ徴集又ハ採用セラレタル現役兵（師範学校ヲ卒業シ国民学校ノ教職ニ就クノ資格ヲ有スル者ヲ除ク）ハ兵役法第五条ニ規定スル現役期間満ツルモ引続キ数次再現役ヲ志願スルコトヲ得
再現役ハ二年ヲ一期トシ海軍大臣ノ定ムル所ニ依リ之ヲ許可ス但シ二年以内ニ現役定限年齢ニ達スル者ハ其ノ定限年齢ニ達スル日迄ヲ一期トス
海軍特修兵令ニ依リ服役ノ義務ヲ有スル者ハ兵役法第五条又ハ本令第七条ニ規定スル現役期間満ツル日ノ翌日ヨリ其ノ義務ノ終ル日迄ヲ一期トシ当然再現役ニ入リタルモノト看做ス

第十五条

予備役又ハ第一国民兵役ノ志願兵ニシテ戦時又ハ事変ノ際シ召集ヲ令セラレタル者応召ノ日ニ於テ予備役又ハ第一国民兵役ノ期間ヲ過グルニ至ルベキトキハ前条ニ規定スル命又ハ召集解除ノ命アル迄其ノ服役期間ヲ延長ス

第二十二条

兵役法第二十条、第二十一条第一項及兵役法施行令第三十八条ノ規定ハ志願兵ノ服役ニ之ヲ準用ス

第二十三条

第二十条又ハ前条ノ規定ニ依リ現役ヨリ予備役ニ転ジタル志願兵ノ予備役期間ハ前ニ服シタル期間ヲ通算シ十六年ニ満ツル日迄トス

第三章 徴募

第三十三条

鎮守府司令長官及地方長官ハ海軍徴募官及地方徴募官ヲシテ徴募ノ事務ヲ執行セシム
地方徴募官ハ前条第二項各号及第三項ニ掲グル区分ニ従ヒ各当該検査所ノ担任区域ニ係ル徴募ノ事務ヲ執行スルモノトス
地方徴募官事故アルトキハ兵事官又ハ地方事務所長ニ在リテハ地方長官ノ指名スル其ノ部下ノ官吏、支庁長又ハ市長ニ在リテハ其ノ職務ヲ代理スル者地方徴募官ノ職務ヲ代理ス

第三十四条

海軍徴募官ハ徴募検査ノ事務ヲ執行シ合格者ノ決定ニ任ズ
徴募軍医官ハ身体検査ヲ掌リ体格等位ノ決定ニ任ズ
地方徴募官ハ徴募検査ノ事務ヲ執行シ徴募検査ヲ受クル者ノ身上ニ関スル調査ニ任ズ
町村長ハ検査所ニ出席シ海軍志願兵徴募官ノ諮問ニ応ズベシ

第三十五条

地方長官ハ検査所ヲ開設スル地ノ市町村長ヲシテ予メ徴募検査ニ関スル準備ヲ為サシムベシ
地方長官ハ徴募検査ニ際シ必要アル場合ニ於テハ市町村長ニ命ジ当該市町村長ノ吏員ヲシテ徴募事務ヲ補助セシムルコトヲ得

第三十五条ノ三

前条ノ場合ニ於ケル徴募検査ハ志願者ノ在留地附近ノ艦船部隊其ノ他海軍各部、地方庁若ハ領事館（明治三十二年法律第七十号第十九条ニ規定スル領事館ヲ謂フ）内又ハ各其ノ所在地ニ於テ之ヲ行フ

第三十五条ノ四

海軍大臣ハ朝鮮ニ在リテハ道知事、警察署長、府尹、区長及邑面長、台湾ニ在リテハ州知事、庁長、郡守、警察署長及支庁長、関東州ニ在リテハ関東州庁長官、市長、民政署長及警察署長、満洲国ニ在リテハ満洲国駐剳特命全権大使ノ指定スル大使館兵事員ヲシテ第三十五条ノ二ニ規定スル徴募事務ノ一部ヲ担任セシムルコトヲ得

第三十七条

地方長官ハ前条第二項ノ規定ニ依ル通知ニ基キ市町村長ヲシテ其ノ管内ニ現住シ志願兵タルコトヲ志願スル者ニ付第二十四条及第二十七条ニ規定スル資格ヲ審査シ且第二十八条各号ノ一ニ該当セズト認ムル者ノ兵種別員数ヲ報告セシムベシ
地方長官ハ前項ノ規定ニ依ル報告ヲ総括シ之ヲ鎮守府司令長官ニ通知スベシ

第三十八条

志願兵ノ入団、入校又ハ入隊期日ハ六月一日トス但シ海軍大臣ハ必要アル場合ニ於テハ之ヲ変更スルコトヲ得

第三十九条

鎮守府司令長官ハ志願兵入団、入校又ハ入隊ノ際現役ニ堪ヘザル者ナルトキ又ハ志願兵トシテノ適性ニ乏シキ者ナルトキハ其ノ採用ヲ取消シ帰郷セシム
鎮守府司令長官ハ志願兵入団、入校又ハ入隊ニ際シ疾病其ノ他避クベカラザル事故ニ因リ入団、入校又ハ入隊シ難キ者ナルトキハ二十日以内其ノ入団、入校又ハ入隊ヲ延期スルコトヲ得

第四十条

鎮守府司令長官ハ志願兵入団、入校又ハ入隊期日後二月以内ニ闕員ヲ生ジタルトキハ其ノ補闕ノ為更ニ志願兵ノ採用ヲ為スコトヲ得

第四十一条

海軍大臣ハ鎮守府ノ所管徴募区内ニ於テ要員ヲ採用スルコト能ハザルトキハ他ノ鎮守府ノ所管徴募区ヨリ之ヲ補充セシムルコトヲ得

第四十二条

検査所其ノ他ノ検査施設ノ諸費、志願兵ヲ志願スル者ノ検査ヲ受クル為ノ旅費、志願兵入団、入校若ハ入隊ノ為又ハ飛行予科練習生タル飛行兵ヲ志願スル者海軍航空隊ニ於テ検査ヲ受クル為ノ旅費及附添ノ官吏吏員ノ旅費ハ之ヲ官給トス

第四章 召集

第四十三条

帰休中ノ志願兵又ハ予備役若ハ第一国民兵役ノ志願兵ハ戦時又ハ事変ニ際シ必要ニ応ジ之ヲ召集ス

第四十四条

帰休中ノ志願兵又ハ予備役ノ志願兵ハ勤務演習ノ為之ヲ召集スルコトヲ得

第四十五条

帰休中ノ志願兵ハ臨時補充ノ為其ノ他必要アル場合ニ之ヲ召集スルコトヲ得
予備役ノ志願兵ハ警備其ノ他ノ必要ニ因リ帰休中ノ志願兵ヲ召集スルモ尚兵員ヲ要スル場合ニ之ヲ召集スルコトヲ得

第四十六条

兵役法第六十条乃至第六十三条並ニ兵役法施行令第四章（第百十九条乃至第百二十一条ヲ除ク）及第百四十三条ノ規定ハ本令中別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外志願兵ノ召集又ハ簡閲点呼ニ之ヲ準用ス

（昭和２年１１月３０日勅令第三百三十四号）