各省官制通則

第一条

本則ハ外務、内務、大蔵、陸軍、海軍、司法、文部、厚生、大東亜、農商、軍需及運輸通信ノ各省ニ適用ス

第二条

各省大臣ハ主任ノ事務ニ付其ノ責ニ任ス
主任ノ明瞭ナラサル事務ニシテ両省以上ニ関渉スルモノアルトキハ閣議ニ提出シテ其ノ主任ヲ定ム

第三条

各省大臣ハ主任ノ事務ニ付法律勅令ノ制定、廃止及改正ヲ要スルコトアルトキハ案ヲ具ヘ閣議ニ提出スヘシ

第四条

各省大臣ハ主任ノ事務ニ付其ノ職権若クハ特別ノ委任ニ依リ省令ヲ発スルコトヲ得

第五条

各省大臣ハ主任ノ事務ニ付警視総監、東京都長官、北海道庁長官、樺太庁長官、府県知事ニ指令又ハ訓令ヲ下スコトヲ得

第六条

各省大臣ハ主任ノ事務ニ付警視総監、東京都長官、北海道庁長官、樺太庁長官、府県知事ヲ監督ス若シ警視総監、東京都長官、北海道庁長官、樺太庁長官、府県知事ノ命令又ハ処分ノ成規ニ違ヒ公益ヲ害シ又ハ権限ヲ犯スモノアリト認ムルトキハ其ノ命令又ハ処分ヲ停止シ又ハ取消スコトヲ得

第八条

各省大臣ハ内閣総理大臣ヲ経テ所部ノ官吏ノ叙位叙勲ヲ上奏ス
地方官庁官吏ノ叙位叙勲ハ前条第二項ノ例ニ依ル

第九条

削除

第十条

各省ニ大臣官房ヲ置ク
大臣官房ニ於テハ左ノ事務ヲ掌ル

1. 機密ニ関スル事項
2. 官吏ノ進退身分ニ関スル事項
3. 大臣ノ官印及省印ノ管守ニ関スル事項
4. 公文書類及成案文書ノ接受発送ニ関スル事項
5. 統計報告ノ調製ニ関スル事項
6. 公文書類ノ編纂保存ニ関スル事項
7. 本省所管ノ経費及諸収入ノ予算、決算並会計ニ関スル事項
8. 会計ノ監査ニ関スル事項
9. 本省所管ノ官有財産及物品ニ関スル事項
10. 其ノ他各省官制ニ依リ特ニ大臣官房ノ所掌ニ属セシムル事項

各省ノ便宜ニ従ヒ大臣官房ノ事務ハ各総局若クハ局ニ於テ又ハ特ニ局ヲ設ケテ之ヲ処理セシムルコトヲ得

第十一条

削除

第十二条

各省中省務ヲ分掌スル為局ヲ置ク但シ軍需省及運輸通信省ニ於テハ局ノ外総局ヲ置ク
各総局及各局ノ分掌事務ハ各省官制ニ於テ之ヲ定ム

第十三条

大臣官房及各局ノ分課ハ各省大臣ノ定ムル所ニ依ル
陸軍省海軍省中ノ分課ハ各其ノ省官制ニ於テ之ヲ定ム

第十三条ノ二

前条ノ規定ニ拘ラス局中局務ヲ分掌スル為部又ハ部及課ヲ置クコトヲ得
前項ノ部並部及課ニ関シ必要ナル事項ハ各省官制ノ定ムル所ニ依ル
第一項ノ部ニハ各省大臣ノ定ムル所ニ依リ（陸軍省海軍省ニ在リテハ各其ノ省官制ノ定ムル所ニ依リ）課ヲ置クコトヲ得

第十三条ノ三

軍需省及運輸通信省ニ於テハ各其ノ省官制ノ定ムル所ニ依リ総局ニ長官官房及局ヲ置ク其ノ分掌事務及分課ハ其ノ省大臣ノ定ムル所ニ依ル

第十四条

各省ニ左ノ職員ヲ置ク

政務次官

次官

参与官

局長

秘書官

書記官

属

軍需省及運輸通信省ニハ前項職員ノ外各総局ニ総局長官ヲ、総局各局ニ局長ヲ置ク

第十四条ノ二

各省政務次官ハ一人勅任トス

第十四条ノ三

政務次官ハ大臣ヲ佐ケ政務ニ参画シ帝国議会トノ交渉事項ヲ掌理ス

第十五条

各省次官ハ一人勅任トス

第十六条

次官ハ大臣ヲ佐ケ省務ヲ整理シ各局部（省外局部ヲ含ム）ノ事務ヲ監督ス

第十七条

各省参与官ハ一人勅任トス大臣ノ命ヲ承ケ帝国議会トノ交渉事項其ノ他ノ政務ニ参与ス

第十七条ノ二

各総局長官ハ一人勅任トス大臣ノ命ヲ承ケ其ノ主務ヲ掌理シ並総局中長官官房及各局ノ事務ヲ指揮監督ス

第十八条

各局局長ハ一人勅任トス大臣ノ命ヲ承ケ其ノ主務ヲ掌理シ及局中各部課ノ事務ヲ指揮監督ス

第十九条

総局各局長ハ一人勅任トス上官ノ命ヲ承ケ其ノ主務ヲ掌理シ及局中各課ノ事務ヲ指揮監督ス

第二十条

各部ニ部長一人ヲ置ク勅任又ハ奏任トス上官ノ命ヲ承ケ部務ヲ掌理ス
部長ハ前項ノ規定ニ拘ラス各省官制ノ定ムル所ニ依リ高等官ヲ以テ之ニ充ツルコトヲ得

第二十一条

秘書官ハ奏任トス大臣ノ命ヲ承ケ機密事務ヲ掌リ又ハ臨時命ヲ承ケ各局部ノ事務ヲ助ク

第二十二条

書記官ハ奏任トス大臣ノ命ヲ承ケ大臣官房ノ事務ヲ掌リ又ハ各総局若クハ各局ノ事務ヲ助ク

第二十三条

各省専任秘書官ハ一人トス

第二十四条

大臣官房並総局及局中各課ニ課長一人ヲ置キ高等官ヲ以テ之ニ充ツ課長ハ命ヲ上官ニ承ケ課務ヲ掌理ス
陸軍省海軍省中ノ課長ハ各其ノ省官制ノ定ムル所ニ依ル

第二十五条

属ハ判任トス上官ノ指揮ヲ承ケ庶務ニ従事ス

第二十六条

削除

第二十七条

本則ニ掲クルモノノ外各省特別ノ職員ヲ置クコトヲ要スルモノハ各省官制ニ於テ之ヲ定ム
部長、書記官、属及前項ノ規定ニ依ル職員ノ定員ハ各省官制ノ定ムル所ニ依ル

（明治２６年１０月３１日勅令第百二十二号）